レスリー・チャンは生きている?張国栄生存説のデタラメ度
「レスリーが今も生きていたら…」、レスリー・チャン(張国栄)のファンなら今でも折につけ思うことではないでしょうか。たとえ芸能界で活躍せずとも、世界のどこかで生きていてくれたら、少しは救われる気がするファンは多いはず。
中華圏のネット上には、そんなファンの心をざわつかせるようなレスリー・チャン生存説が存在します。レスリーが今も生きていて、仏門に入って修行しているという説です。
荒唐無稽すぎる話ですが内容を見てみましょう。
誰が、いつ言い始めたのか?
ヒトラーやマリリン・モンローなど有名人の死には、「今も生きている」という都市伝説は付き物ですが、多くの場合は誰が言い出したのか分からない噂に過ぎません。
レスリー・チャン生存説もレスリーが亡くなった2003年末頃からネット上でささやかれるようになりましたが、いずれも目撃者の姿が見えないものでした。
しかし、「自分の目で見た!」と主張する目撃者が現れたのです。
哥哥が生きていると公に吹聴し始めたのは、宋祖徳という芸能評論家。
というと立派な肩書きですが、根拠のない芸能人のスキャンダルを吹聴することが多いために「宋欠徳(良心に欠ける宋)」「宋大嘴(大ボラ吹きの宋)」などとあだ名されている人物です。
宋祖徳氏
誰と誰が同棲している、離婚したなどの一般的なスキャンダルばかりか、死んだ人を生きていると言ったり、生きている人を死んだと言ったり、女優を「実は男性」と言ったり、もう荒唐無稽な話ばかり。
最初に宋氏がレスリー・チャン生存説を主張し始めたのは、2006年9月12日、レスリーの50歳の誕生日のことです。
自身のブログに「レスリー・チャンは死んでなんかいない。五台山で修行をしている」とのタイトルで文章を発表し、世間を騒がせました。
レスリー・チャン生存説を主張する根拠は?
現在、当時宋氏ブログが文章を投稿したと思われるブログ記事そのものはネット上のリンクも切れていて見つかりませんでした。しかし2006年9月12日に宋氏が投稿した記事を話題にした報道はいくつも残っています。
それらによると、記事によって多少細部に違いがあったりするのですが、いずれも「今年4月に五台山に参った際、不思議な老僧に出会い、その老僧が密かに修行しているレスリー・チャンに合わせてくれた。目を閉じて只管打坐していたレスリーは以前より少しふっくらしていたものの、整った顔立ちは世に二つとない。レスリー・チャンに間違いない。生前レスリーが歌った『覇王別姫』や『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』などの曲を口ずさみ、『沈黙是金』まで歌うと彼の頬を涙が伝った。しかしレスリーにそっくりな彼はやはり何も語らなかった」とまるで映画のようなストーリーです。
そっくりさんがいる場を離れた宋氏は意味ありげな表情の1人の僧に出会う。何度も頼み込むと僧は以下のような内容を語りました。
「五台山に来たレスリーが僧に明かしたところによると、当時、レスリーは大陸の不動産商と恋愛関係にあり、不動産商が3億元の資金を投じて、レスリーのための超大作を製作する予定で、脚本もレスリーが丹念に目を通して俳優人生の最高傑作を作ろうと考えていた。しかし、万事用意が調った時点で不動産商が違法行為によって重罪の判決を受けてしまった。(詐欺によってだまされた説の報道もあり)これによりレスリー・チャンは致命的な打撃を受け、出家したいと考えるようになった」と。
もし、以上の話が本当なら2003年4月1日に香港マンダリン・オリエンタルから飛び降りたのは誰なのでしょう。
しかし、これに関して僧は「彼は決して語ろうとしない」と答えたそうです。
参考サイト:
http://ent.sina.com.cn
http://www.chinanews.com
エイプリルフールが伏線?
上記の発表を受けて、華夏時報の記者が取材したところによると、「なぜ老僧が宋氏に明かしたのか」という質問に「たぶん、私が有名人でお金を持っていると考えて、五台山への布施が欲しいために、このことを明かして自分の信頼を得ようと思ったのだろう」と答えたとか。もう、何をか言わんやです。
また、宋氏がマンダリン・オリエンタルに宿泊した際に、ホテルマンやガードマンにレスリーの自殺の件を尋ねても、皆言葉を濁して答えようとせず、コメントしないよう上から指示されていると言うのみだったことをあげて、「22階(原文ママ、実際は24階)から飛び降りれば、損傷もひどいはずなのに警察が自殺者はレスリー・チャンだと断定したのも疑わしいでしょう?」と レスリー本人が自殺したことへの不信感を示しています。
さらに「それに、レスリーがエイプリルフールを選んだのは伏線だと思う。自分のような正直な人間が事実を明かすことでレスリーが改めて人前に復活する際には『あれはエイプリルフールの冗談だったんだよ』と言えるように」と発言。
また、宋氏は自分自身もレスリー・チャンのファンを称したうえで「みんなが私をほら吹きというが、自分の人格と良心にかけて真実を話している。スターを利用して注目を集めようとしたりするものか」また「私はただブログを日記変わりにしているだけで、多くの人に注目されたいと思ってはいない。レスリー・チャンが落ち着いて修行に専念できるよう、邪魔したくない」とも語っています。
世間は冷ややかな目で批判的
個人のプライバシーに関わることですから、一流ホテルのマンダリン・オリエンタルの従業員がホテルで起きた事件のことをペラペラ話すほうがおかしいですし、警察は当然、持ち物や身体的特徴、血液型、家族による確認、必要であればその他も含めて、しかるべき検案を経た結果を発表していると思います。
あまりにも荒唐無稽なうえに根拠もなく、これまでの宋氏の発言の信憑姓のなさからもファンも含めて世間はほぼデタラメと受け取り、相手にしない派と「言っていい冗談ではない」と非難する派がほとんど。
「注目を集める気はない」と主張しているものの、最初にレスリー生存説をブログに書いたのは2006年の9月12日。その年の4月に目撃したと言いながら、レスリーの誕生日という世間の関心がレスリーに向いている時に公にしたのは意図的だと思われても仕方ない気がします。
香港マンダリン・オリエンタルから飛び降りたのは誰?
そして昨年11月22日、宋氏は再度、以下のレスリー・チャン生存説を主張しました。
レスリー・チャンのために55歳の唐鶴徳(タンタン)は今も独身でいる。レスリーとタンタンの愛は牽牛と織女のように美しく、我々に同性愛を蔑視する資格はない。かつて激しく愛し合い、相手のために尽くし、苦しい時も楽しい時も共に歩んできた。別れたあともお互いの心に深く刻まれていれば、それでいい……。当時、レスリー・チャンの助手はいくつもの負債を抱えた自殺願望を持つ博徒を探し出し、彼にまとまった金を与えたうえで、レスリーの身分証を彼に持たせ、博徒はホテルの高層から飛び降りた。レスリーが仏門に入る望みは果たされ、彼は愛を手放した……。レスリー・チャンは今も生きている。私は自分の言論のすべてに責任を持つ。
タンタンとの愛を肯定していますが、じゃあ不動産商との愛の件はどうなったんでしょう。それに負債を抱える博徒にいくら本人が自殺願望があるからといって、実質的に金銭と引き換えに死んでもらうわけですから、これが本当なら一種の殺人罪でしょう。相手が個人であるのをいいことに名誉棄損もいいところだと思います。
そもそも、歌手として絶好調だった時期に決然と引退を発表したレスリーですから、もし、本当に出家を望んでいたなら、人の命と引き換えに自由を得るような、卑怯でややこしいことはせず、キッパリと芸能界を引退していたことでしょう。
ネットユーザー:「なんてこった。マジですか?」
宋氏:「絶対、本当。彼はブータンで修行していて、今はかなり太った。泰然自若としている。とてもいい日々を送っている」
そして、いつしか修行の舞台はブータンへ……???
参考サイト:https://kknews.cc
それでもファンはレスリーの生存を夢見ている
宋祖徳氏のデタラメとしか思えませんし、個人の名誉に関わるような話を確かな根拠もなく吹聴しておきながらレスリーファンを名乗るなんざ、とんだお笑いぐさです。
「レスリーは今も生きている」という都市伝説は、一番ふざけているのが宋祖徳氏の説と言ってもいいですが、他にもいくつもあることが分かりました。
それらは、また、別にまとめようと思っています。
二度と帰ってはこない大切なものを失った時、「もし……」と考えてしまうのは人間の性でしょう。悲しみは乗り越え、手放すべきは手放さなければならない。しかし時に失ったからこそ、よりしみじみと感じられる大切なものの価値を考える時間は自分の生き方をも顧みるきっかけとなるかもしれません。
ありきたりな言葉ですが、この世にはもういなくてもレスリーはファンの心の中で生きている。さらに作品の中で生き続け、新たなファンを生み出しています。
人は誰しもいつかは死ぬ。でも、肉体を失った時に誰かの心の中で生き続けられたら、何世代も超えた会ったこともない人々を魅了することができたら、本当にすばらしいです。ただ、やはりそれはレスリーのように選ばれし者だけに許された特権でしょう。
と美しく締めたところで、全然関係ありませんが私には宋祖徳氏と韓流のソン・ジュンギ氏が、何となく遠い親戚に見えて仕方がないのですよ。
(ソン・ジュンギ・ファンの皆さん、落ち着いて。石を投げないで!)
「ざけんなっ!」byジュンギ